耐震、住環境改善無料相談会後の個人的感想

2011.04.21更新

東北地方太平洋沖地震において、特に岩手県内陸南部における地震、及び度重なる余震で被害を受けた方々への支援として、有志2名の建築家で構成した相談会を実施しました。
当日は震災後、住まいに関するお悩みを持つ沢山の方々に来場いただきました。特にこの相談会を開催した地域特有の被害状況や、被害を受けた方々について僕なりに感じたことをここに記します。実際に困っている方々の問題を浮き彫りにし、地震災害の問題共有として多くの皆さんに発信できたらと思っています。

  • 今回の地震の特徴
    3.11の地震時の被害も去ることながら、それに追い討ちをかけるようにして発生する余震による被害拡大が目立った。3.11地震で受けた損傷部分が余震の影響で更に傷口を大きくしたといえる。相談に来られた方々が一様に口にした。一関市は岩手県の中でも震源地に一番近いことから、震度6弱という発表だったが、恐らく瞬間的な震度としては6強になったところもあると予測される。これにより多くの家屋は建築基準法で定める構造基準※1数百年に一度発生する地震(震度6強から7程度)の地震力に対して倒壊、崩壊せず、数十年に一度発生する地震(震度5強程度)の地震力に対して損傷しない程度。(建築基準法同等)如何に関わらず、地盤の性状による直接の被害が散見されたようだ。

    ※1 建築基準法による耐震等級1の耐震性能を示す。

  • 耐震性能における地域的な特徴
    古くから築かれた地域では耐震等級1にも満たない家屋が、かなりの数で残っている。こういった地域では無筋コンクリートの基礎や、耐力壁の配置バランスの悪さ、壁量不足等の不安定な構造で成り立っている家屋が多い。今回の地震では、それら構造的に不安定な家屋は倒壊したものもあるらしいが、大きな震度だった割には殆どが倒壊せずに残っている。このことから、損傷の程度イコール地盤の性状が家屋の損傷度合いに大きな影響を及ぼしたことになり、地域的被害という観点からみると耐震性よりも、地盤リスクによるものが大きいといえそうだ。

  • 地盤の性状による家屋の破損度合い
    今回ほどはっきりと地盤の性状が被害の度合いを大きく変えたものはない。それは専門家であれば誰しも構造力学上、当然の事として認識はしているが、被害が大きかった地域とそうでない地域に、地域帯毎に極端な差として明瞭に線引きされたかたちで現れていることが、やはり地盤の性状がそもそもの要因だったといえる。 このことから耐震性能も勿論大事だが、それよりも地盤の軟弱性の改善、擁壁の強固な改善が求められるだろう。実際に、地盤改良した土地より改良しなかった土地の方が明らかに被害が大きく、柱や床が大きく傾き、基礎にクラックが入り、その被害も全壊と云えるレベルのものもあり、大きな余震に油断ならない状況下でもあった為、現場を見てすぐに避難を促した案件もあったほどである。

  • 二次的災害の防止
    岩手県ではすぐに応急危険度判定を実施しなかった。それは建物による二次的災害を防ぐために被災直後に実施されるものであり、県では沿岸部の被災状況が津波で壊滅的であった為か、被災建物がそれほど多く残っていないものと判断されたからだと思われる。しかし被害は沿岸部のみでは無く、実際には内陸南部で地震による被害が数多く見られた。外壁の剥落、基礎のクラック、内壁のヒビ割れ、床や柱が傾く等、多くの問題点がこの相談会で寄せられた。このように岩手県では内陸部において地震や余震の被害を受けて殆どが残っている建物について応急危険度判定を実施しなかったために、危険であると判定される建物に未だ住んでいる人も実際に居る。そういった境遇にある人々は自身で判断し、公的機関に相談するしか現状では手立てがない。素人に構造的欠陥の判断ができる訳もなく、保険金を足しにそのまま補修して住み始めているのが実情。特に擁壁を持つ土地に建つ家屋は、顕著にその被害が見られる。擁壁の亀裂や傾倒により地盤が緩み、基礎に影響を及ぼし床が傾く等の損傷を受けている。当然そのままでは、住まいとして機能しない。何らかの修繕と共に耐震補強が必須である。

  • 相談会(一関市)での一般的被害例
    1)道路や土地が陥没、液状化もみられた
    2)擁壁にクラックが入った
    2)床や柱が傾いた
    3)外壁が剥落した
    4)基礎にクラックが入った
    5)内壁がヒビ割れた
    僕が対応した中で一番多かった大きな被害は、床の傾きと基礎、擁壁のクラック、地盤の陥没である。 やはり建物自体より地盤からの要因だということが良く分かる。

  • 被害を受けた建物の今後について
    Phase1 家屋の修復前に必ず罹災証明書を市町村役場で発行してもらってください。国や自治体、税金や住宅ローン等の各種の緩和を受けるときに必要になります。
    Phase2 古い建物は経年劣化があるので一概に言えないところもあるが、建てた当時の設計や施工について妥当性があったかどうか?つまり隠れた瑕疵が無かったかどうかである。また、建てた当時の工務店が廃業している等で、どこに相談したら良いか分からない。保険金の支払いは?等の保障関係がある。この問題は、建築士や施工業者によるハードの物理的な判断よりも、法律に関する問題に発展する可能性も孕んでいる。
    Phase3 次に、どう修復するのか?その費用は?という、実際の補修内容と費用的な面が現実問題として浮上し、人々の頭を抱えさせる。地震保険に入っていたからといって、保険金が工事費用の全額分について支払われる訳ではない。ある程度は保険金で賄える損傷レベルのものも中にはあるが、構造的欠陥で一部損壊と判断された場合、本当に始末に負えない。保険の診断に不服がある等の声も寄せられ、相談に来られた方々のほぼ半数がなにがしかの要因でこの部類に入るのではないだろうか。地震保険の適用範囲に物理的限界があり、あくまでも予測だが今回の様な大規模な災害においては、辛い評価になっているのかも知れない。まずは加入している保険会社に相談することが肝要だ。
    Phase4 構造の被害については専門家に相談することが大切です。損傷の度合いを素人で判断するのは危険です。そのくらい今回の地震の被害は大きなものになっています。無筋コンクリートの基礎にヒビが入っていれば、まず間違いなく構造的な欠陥が生じたといえます。知合いに建築士等の専門家がいれば問題ないですが、どこへ相談して良いのか分からない方は、岩手県では最寄の市町村役場、建築士会、建築士事務所協会が窓口となって各種相談に応じています。自分で判断するのではなく、専門家に相談してみてください。

  • 総括
    先に書いたように、内陸部において今回の震災は、地盤の性状が大きく明暗を分けた。 地盤調査の結果、軟弱地盤の境界ラインにある土地は今後、地盤改良の対象に含めるべきものと思われる。それから保障面での脆弱性にはまったく驚かされた。判定の善し悪しや妥当性を含め、損壊した部分の修繕費をどう捻出するかは、持ち主にとって最大の課題である。地震保険に入っているからといって安心は出来ない。これらを踏まえ今後は最初にきちっと耐震性と、地盤の強化を図る事がまずは先決であるといえそうだ。