マルセイユのユニテ・ダビタシオン
「長らく原書でも読めなかった幻の著作に、詳細な解説を付した、文庫オリジナルの新訳。図版多数。」・・まず、この解説に興味を引いた。マボロシの・・と付けば、人の心理として手にとってみたくなるではないか。初版が1955年というから、僕はまだこの世に生を受けていない時代。それ以前に展開されたコルビュジェの各地での都市計画が、インドのチャンディガール以外に実現されることなく計画のみで終わってしまった緻密な理論の蓄積があった。それらを今度は、集住体というかたちで理論展開させたものがユニテ・ダビタシオンである。一言で単純に言ってしまえば、都市の平面的な展開を、断面的展開に置き換えたものである。ちょっと強引過ぎるが・・。
住戸は360あり、これに保育所やホテル、さらにはバー等を上階に配し、コルビュジェが説いた近代建築の五原則である屋上庭園を設けている。これをプロトタイプとし、各地にユニテ・ダビタシオンを展開させ、当時のフランスが抱いていた住宅不足問題の解決の糸口としたのである。しかし計画はすんなりと進んだ訳ではない。この計画を知った市民からは、メゾン・デュ・ファダ(気狂い館)との洗礼名を与えられてしまう。しかしコルビュジェは怯まず独自の理論に裏付けする努力を惜しまなかった。都市の構造、自然環境への推察、人間の考察、システム、設備、モデュロール、様々な理論のもと、ある秩序の上に、規格化・定量化を研究し、それらを一般大衆の生活ベースに合わせられるような標準化を目指した。特定の人々の生活を想定せず、一般市民のための大衆側に立つ新しい生活の器としたのがユニテ・ダビタシオンであると。20世紀今日までの大衆社会成立の特徴を物語った建築であると言えそうだ。そのマルセイユのユニテ・ダビタシオンが完成間もない頃に、コルビュジェによって書かれたもので、日本語訳は坂倉準三氏の初版から長らく重版がなく、今回の新訳での再版となった模様である。コルビュジェの独特の言い回しと文体は取っ掛かり難いが、最後は病みつきになり、普通の文体と言い回しでは物足りなくなってしまう(笑)
分かりやすい解説付きで図版も多く、ユニテ・ダビタシオンを理解する上では必要不可欠な書籍となるだろう。コルビュジェの都市計画には賛否両論あり、プロパガンダ的な存在ということもあろうが、建築家という以前にひとりの人間として社会に対し強い意志をもって真摯に向き合ってきた人物だからこそ、今なお評価され続けるのだろうと思う。
コルビュジェの精神が沢山詰まった一冊である。
2010.03.14

